2015年7月23日木曜日

黙想:人が惜しむこと、神が惜しむこと

今日は日本聖書協会の「愛読こよみ」から。

今日の聖句 2015年7月23日 生ける神

格別に印象に残ったのは、次の箇所だった。

 主はこう言われた。
 「お前は、自分で労することも育てることもなく、
  一夜にして生じ、一夜にして滅びた
  このとうごまの木さえ惜しんでいる。

  それならば、どうしてわたしが、
  この大いなる都ニネベを惜しまずにいられるだろうか。
  そこには、十二万人以上の右も左もわきまえぬ人間と、
  無数の家畜がいるのだから。」

1.私が物惜しみをすることについて

私が今手にしている多くのものは、労せずに得てきたと思う。もちろん労して得た者も多くあるが、それもまた、多くの人たちの支えなしにはあり得なかった。それは、この聖書箇所の主人公ヨナのとうごま、つまり神が束の間彼に日陰を与えるべく育てた木と、根本的にさほど違わないはずでもある。

もちろん、社会的にはそれらはその人の所有である。奪われてはならない。それは近代自由主義、資本主義の社会の基本でもある。また、一人一人の生活を支える様々の所有物やアクセス権は、その人が生きていく権利を支える土台にもなる。おそらく聖書もそのことを否定しているのではないだろう。ここでも、ヨナがトウゴマを惜しんでいることを否定してはいない。ただ、それはしかし、そのようにして人を支える根源的な人格が存在し、その方が私たちに、それはそもそもでいればあなたのものではないでしょう? 受けたものでしょう? と問うている、ということになる。それは実存の根底を問う哲学的、あるいは宗教的な問いである。

2.神が物惜しみすることについて

そして、聖書はそのすべての根源、源であり、与え手であるところの神ご自身が、一つの10万規模の都市を惜しむと言っているのである。聖書は、ニネベはやがて滅びることを告げている。しかしそれは、邪悪な人々がいる街なのだから滅びて当然、というようなすっきりしたものではない。むしろ、問題だらけの都市(国家)について、その根源的所有者たる神は「右も左もわきまえぬ人間と無数の家畜(広げれば所有物、ということになるだろうか)」とも見る。優先されているのは問題の改善、解決である。

ヨナは自分たちの国の脅威であったニネベを憎んだ。そして自分たちの神であるはずの神が、自分のような、邪悪な街ニネベなど滅んでしまえ、と心の底から思っている愛国者を用いて、邪悪な道から立ち返りなさい、と告げさせ、あまつさえ、それで改悛の情を示したからと言って赦してしまう、ということが、どうにも解せなかった。しかし、神は、自分に免じて、そういう見方をしないようにしてくれ、と言っているようだ。

3.緊張関係にある隣国をどう思うかについての、一つの視点

国際関係には、古代以来現代まで、緊張がつきものであった。そしてそれに対処するに際し、クラシックな言い方でも、力の均衡を重んじる現実主義的な考え方、相互依存関係を促進して軍事よりも通商で関係改善しようとする考え方、世界の競争と貧富差に介入して平等を目指すことで争いを減らそうとする考え方など、いくつかのモデルが出され、取り組まれてきた。それ自体は専門的な議論として、きちんとなされるべきだろう。ただ、一つの国の人間として、緊張関係にある、脅威と考えられることもある隣国について、どう思うかについてのひとつの宗教的な捉え方のヒントはここにあるようにも思った。

私たちは、そういう国々が問答無用の邪悪な存在であるように思えるし、極端な人なら、滅んでしまえばいいのに、とすら思うかもしれない。そしてひるがえって自分たちはなかなかいい国だと思うかもしれない。

しかし、(1) 私たち(の国)が手にしている良いものの多くは、実は根本的には私たち自身が労したのではなく手にしているものが多い。

(2)相手の国もまた、神のものである。そして神から見るときには、その国の人々は経済運営や国の統治について方向性を見失って苦しんでいるのかもしれない。(もちろんひるがえって、自分たちの国もそうかもしれない)

(3)だから、少なくとも、私たちが多文化に対して、あるいは自分たちと異なる隣人たちに対して抱いている違和感や反発はそれとして、それと神の思いは異なる、ということを、神は私たちに理解してほしいのではないか。

曰く嫌韓、嫌中、嫌ロシア…或いは反日など。或いはギリシャみたいな国を突き放したくなる気持ちも。いったん嫌いになってしまったら、たとえ周りがそういうことの愚かさと幼稚さを指摘しても、なかなか変われないのかもしれない。しかし、キリスト者であるならば、少なくとも頭の片隅では、きっと神は私たちとは違うお考えをお持ちなのでは、という考えを大事にすべきだろう、と思う。

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